海外からの冷静な目〜ウォール・ストリート・ジャーナルより - 太陽同盟 - Yahoo!ブログ
少なくとも大震災に伴う最近の混乱以前は、日本は電力供給では世界でトップだった。米国ないしドイツといった国と比べて停電の頻度は非常に少なかった。しかしそれが日本の電力事情をいびつなものにする誘因の存在を覆い隠していた。
これまで日本には電力料金の原価加算方式(「総括原価方式」)と強力な地域独占体制があって、世界最高クラスの電力システムが構築できるのも全く不思議ではなかった。しかしその裏で、電力価格に歯止めをかける理由もほとんどなかった。その結果、日本の企業や一般世帯は先進国の中でも最高クラスの電力料金を支払っている。
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過去10年間で価格は下落した。これは、完全には実現しなかった規制緩和の「脅威」によるものだ。それでも国際エネルギー機関(IEA)の「主要世界エネルギー統計2010」によれば、日本の産業向け電力の顧客はキロワット時当たり16セント(約13円)支払っており、米国や韓国のコストの2倍以上だ。
日本における主要な誘因は発電所の増設で、とりわけ巨額の原子炉建設だった。原発施設建設のコストが上昇すればするほど、電力会社にとって利益が増え、経済産業省にとっても予算拡大につながるからだ。同省は原発を規制する一方で積極的にこれを奨励していた。また政治家にとって、それは原発が立地される沿岸農村部に対する巨額の交付金を生み出し、電力会社からの強力な選挙支援が期待できた。
規制当局は電力料金も監視しているから、理論的にはコストに注意を払うよう電力会社に強制できるが、そうしなかった。現状維持が「原子力ファミリー(原子力村)」には好都合だったからだ。
これを是正するには、政府は電力会社向けのインセンティブを改善し、もっと効率的にする必要がある。東京電力など電力各社は今後、運転できる原発が少なくなるため、化石燃料に対するコスト支払いで電力料金引き上げを申請すると予想される。それだけに、改善の重要性はますます高まる。
国税庁によると、電力とガス会社を含む公益事業従業員の年間給与は7万8000ドル(約620万円)以上だ。金融・保険部門を含めても、これは調査対象の14業種の中でもトップだ。
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スマートメーター(通信機能を備えた電力メーター)導入やピーク時の料金引き上げといった需要を抑える措置によって、新規の発電所建設を抑制する余地が生じる可能性はある。既存の施設での発電は、新規施設よりも低コストで能力を向上させられるかもしれない。加えて、発電事業と配電事業を分離すれば、競争が高まる可能性もある。
現状のような法外に高い電力コストは、極めて安定的な供給でさえも、もはや正当化できない。日本の半分の地域では今年夏、停電を回避するため各分野で節電が求められている。この電力不足は、日本の企業が直面し始めている「6つの負担」(高率の法人税、円高、自由貿易協定の欠如など)に加えて、さらに追い打ちになる。
日本の公益事業の問題是正には、福島第1原発の危機の後片付け以上のものが不可欠だ。電力部門は大幅な「配線し直し」、つまり改革が必要なのだ。
[ハード・オン・ザ・ストリート(Heard on the Street)は1960年代から続く全米のビジネス・リーダー必読のWSJ定番コラム。2008年のリニューアルでアメリカ、ヨーロッパ、アジア各国に 駐在する10人以上の記者が加わり、グローバルな取材力をさらに強化。刻々と変わる世界市場の動きをWSJ日本版でもスピーディーに紹介していく]
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