PS3/Xbox 360ゲームレビュー「Dragon Age II」 - GAME Watch
スパイクが発売した「Dragon Age II(ドラゴンエイジII)」は、ダークな雰囲気を持ったファンタジーRPGシリーズの最新作だ。プレーヤーは後に"英雄"と呼ばれることになる人物の、10年の軌跡を追体験することになる。
前作「Dragon Age: Origins」は地下深くに封印されていた古代神アーチデーモンと、彼が率いるダークスポーンと戦うという大きな戦争が描かれた。「Dragon Age II」はその戦争から逃れ、避難した先の街「カークウォール」での物語が描かれる。
街の10年の歴史を描く本作は、「Dragon Age」シリーズの世界をより深く、緻密に表現しており、ファンにはもちろん、シリーズは本作が初めてという人にもオススメできる作品である。登場人物のキャラクター性や、世界観の深さなど、RPGが好きな人は、是非チェックして欲しい。
■ 戦争による混乱、異種族入り乱れる街で英雄へと成長していく
「Dragon Age II」は厳めしい女騎士カサンドラが、ドワーフのヴァリックを尋問するシーンから始まる。彼女は"英雄"と呼ばれる人物に関する情報を探しているという。ヴァリックは手荒い扱いと、カサンドラの圧力に全くひるむこともなく、冗談さえ交えながら、"英雄"の驚くべき半生を語りはじめる……。
主人公は、後に"英雄"と呼ばれる「ホーク」である。彼(もしくは彼女:プレーヤーが選択する)は、「Dragon Age: Origins」で語られた戦争で故郷を失い、家族と共に魔物達に追われる。絶体絶命の時、突然現われたドラゴンに命を救われる。ドラゴンはホーク達の目の前で魔女に変わり、フレメスと名乗る。ホークがカークウォールへ向かうことを知ると、フレメスは彼らを守る代わりに、首飾りをカークウォール周辺のエルフの族長に届けて欲しいと申し出る。フレメスのお陰で、ホーク達はカークウォールへ行くことができた。
しかし、彼らの苦難は終わらなかった。カークウォールは戦争から逃れた難民でごった返しており、この街の貴族であったはずの母の財産は、伯父のせいで残っておらず、それどころか、ホーク達は伯父の借金のため、街の有力者が依頼してくる仕事をしなくてはいけない羽目に。ホークは家族を守り、安定した生活を求めて様々な仕事をこなしていくことになる。彼が後に"カークウォールの英雄"と呼ばれる人物になるなどと言うことは、この時は誰も予想できなかった。
「Dragon Age II」はカークウォールとその周辺を舞台に、ホークとその仲間の活躍を描くRPGだ。カークウォールは難民の流入や、奴隷からの独立を果たしたエルフの居住地があったり、さらには角を持ち、人間より遙かに屈強な"クナリ族"が居座っていたりもする。様々な人々がいて、治安は極度に悪化している。「Dragon Age: Origins」での戦争そのものは1年で終わったが、その混乱は各地で続いているのである。
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さらに「Dragon Age」シリーズの根幹をなす"魔法"の存在が、常に大きな問題となっている。この世界における魔法は、生まれたときに突然開花する才能で、常人にはない強力な力をもたらす。この力は現世とは違う世界に住む「精霊(もしくは悪魔)」との親和性が高く、彼らに精神を乗っ取られた魔道士が破壊行動を取ることもある。このため、この世界での最大の勢力を持つ宗教組織"教会"は「テンプル騎士団」を組織し、魔道士を管理、弾圧を行なっている。
教会に忠誠を誓う魔道士達は自治管理組織「サークル・オブ・メジャイ(俗に"サークル"と呼ばれる)」を組織し、魔道士の保護・育成を行なっているが、テンプル騎士団は常に魔道士に疑いの目を向け続ける。テンプル騎士団は魔法の才能を世間から隠れて使う者を"背教者"と呼び、狩りたてている。世間に反抗する魔道士は血を触媒とする邪悪な魔法を使う「ブラッドメイジ」となり、時には大きな勢力となって、世界を脅かす。
前作「Dragon Age: Origins」でも、魔法と教会の関係や、異種族間の関係、人間そのものが抱える心の闇といったテーマを扱い、物語に独特の深みを与えていたが、それでもプレーヤーの最大の関心は、この世界を脅かすアーチデーモンの戦いだった。「Dragon Age II」はアーチデーモンとの戦いが終わった後の世界を扱い、より深くこの世界が持っている問題点や、移民問題、親子や兄弟の確執など、人間くさいテーマに重点を置いている。前作は魔族と英雄の戦いという"正当なファンタジー"とも言うべき作品だったのに対し、「Dragon Age II」は"人間ドラマ"に主軸を置き、世界そのものを描きだしている。
ストーリーでは、BioWareの作品である本作は、前作や「Mass Effect」シリーズと同様に、様々な場所で選択を迫られ、物語や、仲間達との人間関係がダイナミックに変化していく展開が楽しめる。プレーヤーの決断で大きく物語が変わるシステムは健在である。プレーヤーの行動で、世界との関係そのものも変化する。品行方正で高潔なロールプレイも、殺伐とした反社会的なプレイも可能だ。
筆者は、本作に"ファンタジー版の「Grand Theft Auto(GTA)」"といった印象も持った。避難民の1人でもあり、カークウォールの人々から怪しげな視線を向けられるホークは、依頼される様々な仕事をこなし、信頼を得て、地位を向上させていく。もちろん、「GTA」のような反社会的な志向が濃厚というわけではないが、社会や人間への視点に「GTA」的な鋭さを感じたのだ。
ゲームを続けていると、まるで、カークウォールの一市民となったかのような気持で、様々な問題を考えさせられる。いつの間にかこの世界の住人になりきっている自分を発見できるはずだ。10年ものスパンで"街と社会"を描く、とてもユニークで、面白いストーリーテリングである。シリーズのファンはもちろん、多くのRPGファンにこの独特な作品を楽しんでもらいたい。
■ 多彩なアビリティ、仲間を組み合わせ、戦いを有利に
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「Dragon Age II」では最大4人のパーティーで戦う。プレーヤーキャラクターは戦士、魔道士、ローグから選択する。さらに取得するアビリティでも役割は全く変わってくる。敵を挑発し攻撃を受け止めるタンク役から、攻撃重視のアタッカー、敵を弱体化させたり、味方を強化するサポート役、魔法使いならばヒーラーとしても活躍できる。
仲間も個性的で多彩な能力を持っている。愛用のクロスボウに"ビアンカ"という名前をつけているローグのヴァリック。堅物の女戦士アヴェリン。妖艶な女海賊のイザベラ。テンプル騎士団に対抗する地下活動を続ける魔道士のアンダース。幼さと純朴さを持っているにもかかわらず、エルフの栄光を取り戻すためにブラッドマジックにすら手を染める狂気も併せ持つメリル。彼らもまたアビリティの習得方法で全く異なる強さを獲得していく。自分のキャラクターと仲間をどう育て、組み合わせていくかを考えるのは楽しい。
本作での戦闘は、キャラクターをどう動かし、どのスキルを使うかを瞬時に判断し、的確に指示を出すことでより有利に戦うことができる。PS3ならL2ボタン、Xbox 360ならLTボタンでアクションメニューを開くことで戦闘にポーズがかけられ、各キャラクターの指示ができる。どの敵にどうアビリティを使うか、敵から距離を取るか、ポーションや爆弾を使うか、細かく指示できる。
1つ1つ行動を指示するだけでなく、「作戦」を使うことで、使用するアビリティと条件をあらかじめ指定することができる。前作よりもアクション性が高くなっており、攻撃ボタン連打でコンボ攻撃が行なうことができるほか、アビリティを登録できる「バトルメニューショートカット」と組み合わせ、アクションゲームのような感覚で戦っていける。仲間は作戦にまかせ、プレーヤーはお気に入りのキャラクターの操作に集中し、緊急時に代えて対応するという感じだ。
「Dragon Age II」は前作に比べ、戦闘の難易度が抑えられたとの感想を持った。最大の変更点が味方の攻撃が当たる「フレンドリーファイア」が無くなったことだろう。このため強力な範囲魔法もバンバン使うことができるようになった。攻撃の操作はオプションで前作のような自動攻撃にも切り替えられるが、今作は1キャラクターに注力する戦い方が楽しいと感じた。
この他にも前作とは異なっているところは多い。前作は売却アイテムがわかりにくかったり、回復アイテムが比較的入手しにくいところがあったが、今作ではこの点が改良されている。防具は主人公以外はほぼ固定になっていて、アクセサリーや武器でアップグレードしていく。「Dragon Age II」は全体的に、前作よりも間口が広がった印象を持った。ちなみにゲームの難易度はいつでも変更可能であり、難易度を「ナイトメア」にすると、「フレンドリーファイア」がONとなり、範囲魔法などが味方に当たるようになる。こだわりのプレーヤーは挑戦するのも良いだろう。
■ 異種族、魔法、犯罪、権力争い……隠謀渦巻くカークウォールの冒険
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"街での冒険"が「Dragon Age II」の中心となる。富裕層が住む「ハイタウン」、夜には犯罪者がうろつく下町「ロウタウン」には異種族地域もある。さらにロウタウンにすら住めない住人が地下に追いやられている「ダークタウン」、魔道士達を閉じこめ、テンプル騎士団が管理する「処刑塔」、創造主とその妻アンドラステを信奉している「教会」といった場所もある。街の郊外に鉱山や海岸地帯、エルフ達のキャンプなどもある。
カークウォールでの冒険は、街に来て1年目からのスタートとなる。一緒に逃げていたアヴェリンは1年の街の活動で衛兵隊に入っている。ホークは傭兵としては認められているものの、その稼ぎではロウタウンでの暮らしが精一杯だ。元貴族だった母をハイタウンの家に戻すために一攫千金を夢見るホークは、ドワーフの商人バートランドが、祖先が魔族から追われ放棄した「地底回廊」の探検隊を組織してると聞くが、参加を拒否されてしまう。
しかし、バートランドの弟、ヴァリックがパートナーとしてホークに声をかける。「金貨50枚用意すれば、アニキはお前を仲間に入れるだろう」。ホークは金を稼ぐため、奔走することになる。郊外のエルフのキャンプでは「エルフの栄光を取り戻すためには、邪悪なブラッドマジックも使う」という、少女メリルも仲間になる。前作の拡張パック「Dragon Age :Origins -Awakening」に登場した魔道士アンダースや、皮膚に魔法を刻み込まれた逃亡奴隷の戦士フェリンスなども仲間に加わる。
街はもめ事に溢れており、1年で知名度を得たホークに相談してくる者も少なくない。街では、テンプル騎士団の魔道士への弾圧や、ブラッドメイジが呼びだした悪魔によるもめ事、避難民達を使って過酷な労働を強いる商人など様々な問題が溢れている。狂気を感じさせる連続殺人犯の痕跡を見つけたりもする。謎の理由で街に居座り続けるクナリ族の族長に名を覚えられたり、テンプル騎士団内部の事件に関わったりもする。
これらのクエストは、各場所に赴くことで進行する。カークウォールは大きな街で場所ごとに全く違う顔を見せる。マップは「街の昼」、「街の夜」、「郊外」にわかれており、街の夜では犯罪者が街を闊歩しているし、郊外も危険な場所が多い。クエストは昼から夜、そして郊外といったように、いくつもの場所を移動するものも多い。
様々なキャラクターとの出会いや、事件は、一応の結末は見せるが、その事件が後々影響してくることもある。ホークは求める資金を貯め、地底回廊の探検隊に参加を果たすが、そこで驚くべき事件に遭遇する。そしてその探検を終えた後は、3年後のカークウォールでの物語が展開することになる。ホークの街の立場も変わっているが、かつて関わった事件や街の問題もまた、様々な形で街に影響を及ぼし続けていることをプレーヤーは知るのである。そしてそれは大きな歴史のうねりへと繋がっていくのだ。
■ 個性豊かなキャラクター。ダウンロードコンテンツで広がる楽しさ
「Dragon Age II」は前作以上に仲間のキャラクター性が強くなり、日本のRPGファンにも受けいられると感じた。彼らはそれぞれ重い過去を持ち、運命と闘っている。彼らのストーリーは固有のクエストで展開するのだが、それだけでなく、移動中の"雑談"でもそれぞれのキャラクター性が濃厚に出ているのが楽しい。彼らが雑談をはじめると、思わず立ち止まって聞いてしまう。
エルフの少女メリルは世間知らずで、恋多き女海賊イザベラは、性に関する話でよくメリルをからかう。アンダースはきまじめだが、時々独特のユーモアを発揮する。アヴェリンは四角四面の女戦士だ。ヴァリックはほとんど全員にユニークなあだ名をつけ、仲間の誰とも軽口を叩く。ちょっとした下ネタから、現在のクエストの感想、社会に対する彼らなりの批評など、会話は様々で、パーティ編成で内容が変わる。仲間固有のクエストとしては、堅物のアヴェリンの恋愛を応援する話が面白かった。必見である。
「Dragon Age II」は日本語音声と字幕だけでなく、英語音声も収録されている。英語音声にこだわるコアファンにもうれしい仕様になっているが、筆者は吹き替え音声がお気に入りだ。起用している声優は、洋画系のみならずアニメ作品でも活躍する知名度の高い人が多く、妹ベサニーの凛とした強さは甲斐田裕子さんの声にぴったりだし、ヴァリックは楠見尚己さんがアダルトな雰囲気で演じている。
街を守るために厳しく魔道士を監視する騎士団長メレディスに榊原良子さんなど、豪華なキャストである。ベテラン声優達は、限られたセリフで、独特の雰囲気を出しキャラクターを際立たせる。特に、メリルを演じた大谷育江さんの演技からは、メリルの純朴さと、狂気さえ秘めた一途さ、人間とは全く違う文化を感じさせられて、強く印象に残った。
「Dragon Age II」はプレーヤーの決断で、NPCも、仲間の人生も大きく変わる。ホークの職業の選択で、弟のカーヴァーか、妹のベサニーのどちらかしか生き残れないし、彼らのその後もはっきりと異なる。また、仲間とは恋愛関係になることも可能だ。二股をかけると大きなしっぺ返しをくらいそうだし、同性も口説けるのだが、こういったところもやりこんでみたいと感じた。
この他、日本語版にはいくつものダウンロードコンテンツが同梱されている点も注目だ。特別な商品を扱う「黒のよろず屋」は、前作でも活躍した"マバリ犬"を召喚できるのも楽しい。本作では回復薬を買える店は限られているのだが、黒のよろず屋で大量に購入できる点も嬉しい。この他本編にクエストを追加する「流浪のプリンス」、ホーク家の秘密を探る「レガシー」、「アサシンの印」といったコンテンツも楽しめる。
また、2月11日からは、本作にも登場する女騎士カサンドラを主人公とした、日米共同製作フルCGアニメーション映画の「ドラゴンエイジ-ブラッドメイジの聖戦-」が全国の劇場で上演される。筆者は公開前に試写会で映画を見たのだが、サークルとテンプラーズ(テンプル騎士団)、そしてブラッドマジックと、本作と同じテーマと世界観で、物語が展開するのがとても面白かった。ゲームのファンは見ることで、一層「Dragon Age」シリーズの世界が身近に感じられるだろう。もちろん映画を見てからゲームをプレイするのも楽しい。こちらも是非チェックして欲しい。
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