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英国アート生活
JUGEMテーマ:映画レイネさんのブログや、原作を読んだ友達からの情報で面白そうだった「セラフィーヌ」(2008)、DVDを借りてみた。
邦題は「セラフィーヌの庭」だそうです。
監督: Martin Provost
キャスト:
Yolande Moreau ... Seraphine Louis
Ulrich Tukur ... Wilhelm Uhde
Anne Bennent ... Anne-Marie Uhde
Nico Rogner ... Helmut Kolle
実在のフランス人"素朴派"画家・セラフィーヌ・ルイ(1864 - 1942)の半生、いや3分の1生くらいかな?を描いた作品。
話の冒頭から彼女はすでに40代後半だ。
セラフィーヌはパリの北40kmほどのSenlis(サンリス)という小さな町で、ご近所の掃除や洗濯請負い、その他家事手伝いをして生活費を稼いでいる、質素で信心深い普通の女性。庶民の中でも貧しい部類に属するだろう。
だが夜になると自作の絵の具で、一風変った絵を描いている。
なんでも、守護天使さんから「絵をお描きなさい」とお告げがあったのだそうだ。
誰が根でkunta kinteを果たした絵は習ったこともなく、まったく自己流。周囲の人にたまに見せても、下手くそ、としか思われない。そんなことは気にせず、大好きな木や花にインスピレーションを得て、感じるままに描いている。
たまたまその町に滞在していたドイツ人の画商で美術評論家のウィルヘルム・ウーデが彼女の絵を見つけ、驚く。
「この絵はだれが描いたんですか?」と問い、
「あなたの家に行ってる掃除婦さんよ」と聞いてさらに驚く。
ピカソやアンリ・ルソーを発見した目利きのウーデ、セラフィーヌのすばらしい才能を見抜き、「どんどん描きなさい」と励ます。
彼は戦争でいったんドイツに帰国せざるを得なくなるが、戦後また町に戻り、セラフィーヌがまだ描いていることを知ると、援助を申し出る。
もう掃除なんてしなくていい。アトリエのあるきれいな家に住んで、給料をもらって絵を描くことができるようになる。画材もパリから送られて来る。
画家として、またとない環境が与えられたのだ。
ところが、生まれてこの方ずーーっと貧乏しか知らなかったセラフィーヌは、お金というものが分かっていない。一定額以上は想像力の外だったのだろう。
収入が増えたら、その増えた枠の中で運用すればいいのだが、手加減が分からず、暴走。
タイミングの悪いことに、また次の戦争(第二次)直前の不景気がやってきて、美術市場は冷え込む。
ウーデもセラフィーヌの面倒ばかり見ているわけにはいかない。援助にも限界がある。
やがてセラフィーヌの元々不安定だった精神が、バランスを崩してしまう。彼女は精神病院で余生を送ることとなるのだ。
"正気"の時の絵ですが・・・紙一重です。他の誰にも描けません。
どのようにしたトニー·マルティネス列車ジャネット·ジャクソン大物画商に見出されなければ、縦2メートルのキャンバスに描くことはできなかっただろうから、やはり幸運だったのだろうと思う。
才能って"偏り"なので、それが嵩じると人間として破綻してしまう。
"生まれたい絵"が彼女から養分をぐいぐい吸い取って育っていくようで、ちょっと恐ろしい。
教会の聖油をくすねて絵の具にまぜたり、夜中に素っ頓狂な声で歌いながら制作する、鬼気迫るセラフィーヌを演じたヨランド・モローがすごいです。
そして画面が美しい。
フランスの田舎の生活感あふれた風景でも、質素な室内でも、構図から色、ライティングすべてに繊細な注意が払われている。
隣人夫婦がテーブルについて、つつましく食事しているだけの場面が、1枚の絵のようだ。
決して所謂美人でないセラフィーヌの中年の肉体まで神々しく撮れていて、感嘆した。
ウーデほか、セラフィーヌの周囲の人たちも的確に描かれ、丁寧に作られた秀作。
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